呼吸性移動対策
放射線治療において、肺や肝臓などの呼吸性移動を伴う腫瘍に対する従来の照射では、呼吸の移動を含めた照射範囲が広く設定されているため、周囲の正常組織に余剰な放射線が当たり、副作用を招く可能性があります。さらに放射線治療中の呼吸による腫瘍と臓器の移動が腫瘍に対する線量低下を招き、治療効果が低下する可能性があります。
当院では陽子線治療において、呼吸性移動対策に安西メディカル株式会社の呼吸同期システム、株式会社日立製作所の動態追跡システムの2種類用いております。安西メディカル株式会社の呼吸同期システムは、センサを用いてお腹の表面からの呼吸信号を受け取り、特定の呼吸状態(当院では呼吸をしっかり吐いた時)の時だけ照射を行い、呼吸による移動の影響を受けない放射線治療が可能です(図1)。(参照:「youtube final anzai laser system20140420」)一方、株式会社日立製作所の動態追跡システムは、腫瘍近傍に留置した金属マーカをX線透視にて監視し、マーカがある所定の範囲に入った時のみ照射を行います。腫瘍の様々な体内運動に対応した放射線治療が可能となります。(参照:日立製作所「移動性臓器対応:粒子線治療システム:ヘルスケア」)どちらのシステムも呼吸による腫瘍の移動対策が可能であり、さらに周囲の正常組織の線量を減らすことが可能です。
図1 安西メディカル株式会社の呼吸同期システム