再生医療センター
細胞調整室(CPC)
2021年4月1日 細胞調整室(Cell Processing Center: CPC)が先端医療センター4階フロアに移動いたしました。新しい細胞調整室は、GMPに準拠した高品質な細胞調整(培養・加工)が可能な施設です。新たな環境で、再生医療を「あたりまえの医療」として皆様にご提供できるよう推進していきます。
再生医療のご案内
当院は日本再生医療学会認定医、認定培養士を含むスタッフで再生医療を実施提供しています。再生医療の提供に当たっては、再生医療等安全性確保法を遵守した安全な医療を提供しています。当院で行っている再生医療を紹介します。
問い合わせ先
湘南鎌倉総合病院 再生医療科
担当:大竹
TEL:0467-46-1717(病院代表番号)
1.慢性腎臓病を有する患者に対する自家末梢血CD34陽性細胞移植治療(臨床研究 実施中)
基礎研究※1 と先行臨床研究※2 を経て、2024年4月より表記の細胞再生治療臨床研究を開始しました。この細胞再生治療は特定認定再生医療等審査委員会での審議承認を経て、徳洲会執行理事会承認、厚生局届出を経て行われるものです。
この細胞再生治療は、以下の01. 02. 03. の条件に合う方が対象で、3年間で20名の方にご参加いただく予定です。
- 推定糸球体ろ過値15以上60未満(mL/min/1.73m2)の慢性腎臓病を有する方
- 18歳以上80歳以下の方
- 文書で本人より同意の得られる方
重度の糖尿病性増殖性網膜症や悪性疾患、腎臓病以外に重篤な内臓疾患をお持ちの方など、本細胞再生治療の対象とならない除外基準も設定されていますので、詳細につきましては「問い合わせ先」までお問い合わせください。この細胞再生治療は有償臨床研究であり、患者さまに費用負担をお願いして行う臨床研究です。
- ※1.ヒト培養CD34陽性細胞移植治療によるマウスの進行性腎障害改善効果の確認
World J Stem Cells 2023: 15: 268-280 - ※2.慢性腎臓病に対する自家末梢血CD34陽性細胞移植治療
2023年9月で最終観察終了 現在海外医学雑誌に投稿中
2.自家末梢血CD34陽性細胞移植による下肢血管再生療法(先進医療B 実施中)
当院では、国の認可を受けて、臨床試験として透析患者で本治療を行って来ました。その結果、安全性と高い潰瘍治癒効果、切断回避生存率が認められました。臨床試験として認可された期間は終了し、現在は先進医療B(厚生労働省で認可)として実施中です。対象は、透析患者で、且つ安静時疼痛や足の趾先潰瘍や壊死を有する方です。公的医療保険でまかなわれる保険診療と保険適応外の自費診療を合わせて行うことができることが先進医療(新しい治療技術の評価療養)の特徴で、細胞移植にかかる費用については、現段階では保険適応外ですので自己負担となります(民間の生命保険会社等が提供している先進医療特約などで賄われます)。
3.急性腎不全に対する自家末梢血CD34陽性細胞移植治療(臨床研究 実施中)
私たちは、CD34陽性細胞を含む末梢血中の細胞が高度な急性腎不全に対して有効であることを基礎的研究で確認して来ました。現在は、臨床研究として、人の急性腎不全に対する細胞治療を行なっています。対象患者の主な適格基準は以下の通りです。
- 年齢20歳以上80歳以下の方
- 臨床経過や画像所見から急性腎不全と臨床的に判断される方
- 血液透析を要する急性腎不全を有する方、あるいは血液透析を離脱しえても4週以内に正常の腎機能まで改善しない急性腎不全を有する方
- 本人より同意の得られる方
ご自身の細胞を用いることで基本的に拒絶反応の心配はありません。ご自身のCD34陽性細胞を用いた急性腎不全の治療第1例目を論文として2021年5月にStem Cells Transl Medに発表しました
4.脊髄損傷患者を対象とした自己末梢血CD34陽性細胞移植による神経再生治療(臨床研究 実施中)
脊髄損傷とは、全身の運動や感覚を支配する脊髄が外傷などの原因で損傷された状態をいいます。損傷をうけた脊髄の部位と損傷の程度により、損傷部位の神経が支配する身体の領域に運動機能障害(麻痺)や感覚障害が生じます。重症の場合症状の回復は困難なことがあります。本治療は患者さんの血液中にある細胞(末梢血単核細胞)を取り出し、その中から脊髄の再生治療に期待されている「自己末梢血CD34陽性細胞」を分離します。その細胞を髄腔内に移植する治療法です。現在は臨床研究として実施しております。主な適格基準は以下の通りです。
- 完全な運動機能障害がある頚髄・胸髄損傷の方
- 年齢15歳以上70歳未満の方
- 受傷後4週~16週の方
- 本人、未成年の方は保護者や代諾者から同意がいただける方
5.「自家末梢血CD34陽性細胞移植による下肢血管再生療法」(自由診療 実施中)
上述2の先進医療Bは透析患者の重症下肢虚血を対象として行っていますが、透析患者以外の方でも、安静時疼痛や足の趾先潰瘍や壊死を有する方に対して、自費診療として重症下肢虚血に対するCD34陽性細胞移植治療を行っています。
6.「慢性腎疾患に対する自己末梢血CD34陽性細胞移植治療」(臨床研究 募集終了)
慢性腎臓病(chronic kidney disease: CKD)は、国民の8人に1人は有すると言われるほど多くの方が罹患しています。原因は、腎炎、高血圧、糖尿病、血管炎、膠原病、薬剤、動脈硬化などさまざまですが、CKDが高度に進行すると透析治療が必要となります。現在は、CKDの進展を抑制する確立した根本的な治療法はありません。当院では、患者自身の細胞を用いたCKD再生治療を開始できるよう準備を進め、2022年より患者登録を開始しました。
4名の計画で開始し4名の患者さまにご協力いただき本臨床研究の募集は終了しました。
7.肝硬変に対する自家末梢血CD34陽性細胞移植治療(臨床研究 終了)
当院消化器病センター肝臓グループにて実施しています。
C型肝硬変患者を対象として、CD34陽性細胞の肝動脈からの投与による肝臓再生療法の有効性と安全性を検討する、久留米大学を中心とした4施設(関西医科大学、兵庫医科大学、湘南鎌倉総合病院)による共同研究です。C型肝炎ウイルスに対する抗ウイルス剤の開発は飛躍的進歩を遂げ、多くの患者さんがウイルスから解放されていますが、肝硬変の病態まで回復しているとは限りません。ウイルスが消失しても非代償性肝硬変で苦しんでいる患者さんに対し、有効な治療法となるよう研究を進めています。
再生医療関連論文
Stem Cells Translational Medicine(submitted)
A pilot clinical trial of autologous CD34 positive cell transplantation for patients with chronic progressive kidney disease.
Takayasu Ohtake, Tsutomu Sato, Toshitaka Tsukiyama, Ken Muraoka, Ayaka Mitomo, Haruka Maruyama, Mizuki Yamano, Yasuhiro Mochida, Kunihiro Ishioka, Machiko Oka, Hidekazu Moriya, Sumi Hidaka, Haruchika Masuda, Takayuki Asahara, Shuzo Kobayashi
World Journal of Stem Cells 2023: 15: 268-280
Repetitive administration of cultured human CD34+ cells improve adenine-induced kidney injury in mice.
Takayasu Ohtake, Shoichi Itaba, Amankeldi A Salybekov, Yin Sheng, Tsutomu Sato, Mitsuru Yanai, Makoto Imagawa, Shigeo Fujii, Hiroki Kumagai, Masamitsu Harata, Takayuki Asahara, Shuzo Kobayashi
Stem Cells Translational Medicine 2021: 10: 1253-1257
Acute kidney injury successfully treated with autologous granulocyte colony-stimulating factor-mobilized peripheral blood CD34-positive cell transplantation: A first-in-human report.
Hiroyuki Suzuki, Takayasu Ohtake, Toshitaka Tsukiyama, Marie Morota, Kunihiro Ishioka, Hidekazu Moriya, Yasuhiro Mochida, Sumi Hidaka, Tsutomu Sato, Takayuki Asahara, Shuzo Kobayashi
Cell Transplantation 2018: 27: 520-530
Human peripheral blood mononuclear cells incubated in vasculogenic conditioning medium dramatically improve ischemia/reperfusion acute kidney injury in mice.
Takayasu Ohtake, Shuzo Kobayashi, Shimon Slavin, Yasuhiro Mochida, Kunihiro Ishioka, Hidekazu Moriya, Sumi Hidaka, Ryo Matsuura, Maki Sumida, Daisuke Katagiri, Eisei Noiri, Kayoko Okada, Hiroshi Mizuno, Rica Tanaka
Stem Cells Translational Medicine 2018: 7: 774-782
Autologous granulocyte-colony stimulating factor-mobilized peripheral blood CD34 positive cell transplantation for hemodialysis patients with critical limb ischemia: a prospective phase Ⅱ clinical trial.
Takayasu Ohtake, Yasuhiro Mochida, Kunihiro Ishioka, Machiko Oka, Kyoko Maesato, Hidekazu Moriya, Sumi Hidaka, Satoshi Higashide, Tetsuya Ioji, Yasuyuki Fujita, Atsuhiko Kawamoto, Masanori Fukushima, Shuzo Kobayashi
スタッフ
副院長 / 再生医療科部長 大竹 剛靖
再生医療センターでは、再生医療等安全性確保法を遵守した最先端の再生医療を、1人でも多くの患者様に「当たり前の医療」として提供できることを目指しています。
現在は、これまで有効な治療法が確立していない疾患、[透析患者重症下肢虚血(先進医療B)、急性腎不全(臨床研究)、脊髄損傷(臨床研究)、肝硬変(臨床研究)]に対して自己末梢血由来CD34陽性幹細胞による再生医療を提供しています。また、重症下肢虚血は、透析患者さん以外でも再生治療を受けられるよう体制を整えています(自由診療)。2022年より、新規に「慢性腎臓病(CKD)」に対しても細胞移植治療を開始しました。
これからも、より多くの疾患で再生治療を提供して行きたいと思います。
- 1987年3月
- 浜松医科大学医学部卒業
- 1994年3月
- 同大学院卒業 医学博士
- 2002年1月
- から湘南鎌倉総合病院 腎臓内科部長
- 2012年4月
- 湘南鎌倉総合病院 腎臓病総合医療センター 腎免疫血管内科主任部長
- 2018年1月
- 湘南鎌倉総合病院 副院長
- 2018年4月
- 湘南鎌倉総合病院 再生医療科部長
- 2009年
- アメリカメリーランド大学 Institute of Human virologyに留学し再生医療の研究に従事
- 2014年〜2017年
- 順天堂大学医学部形成外科学研究生として急性腎不全の再生医療研究