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人工膝関節センター

金山 竜沢
金山 竜沢/ 千葉大学医学部卒
人工膝関節センター センター長
略歴
1988年 千葉大学医学部卒業、千葉大学医学部整形外科学教室入局
1989年 熊谷総合病院整形外科勤務
1990年 国立習志野病院整形外科勤務
1991年 君津中央病院整形外科勤務
1992年 八街総合病院勤務
1993年 渡辺整形外科病院勤務
1994年 千葉大学整形外科へ帰局しリウマチ、人工関節分野での研究・臨床に携わる
1996年 米国フロリダ州ウェストパームビーチ、Good Samaritan Medical CenterにてScott Banks PhD(現フロリダ大学教授)のもとで人工膝関節術後の動態解析について研究
1997年 千葉社会保険病院勤務
1998年 君津中央病院整形外科勤務
2005年 君津中央病院整形外科部長就任
2008年 船橋整形外科病院勤務 人工膝関節部長
2018年 北千葉整形外科勤務 人工関節外科部長
2020年4月 湘南鎌倉総合病院 人工膝関節センター センター長
認定等 医学博士、日本人工関節学会認定医、日本整形外科学会専門医、日本リウマチ学会専門医、日本リウマチ財団登録医
所属学会 日本整形外科学会、日本リウマチ学会、日本人工関節学会、日本関節鏡・膝・スポーツ整形外科学会、日本関節病学会、Orthopedic Research Societyなど
詳細

センター長ご挨拶

こんにちは。湘南鎌倉総合病院、人工膝関節センターの金山 竜沢(かねやま りゅうたく)と申します。令和24月に赴任して以来、この湘南鎌倉総合病院で人工膝関節による手術治療を行っています。当初は一人ですべてを行っていたのですが、現在は高田慎太郎先生、奥山裕之先生を迎えて医師3人態勢となっています。当センターは膝の変形による痛みでお困りの患者様に対して、人工膝関節の手術によって治療を行う専門の医療施設です。

日本は世界一のスピードで高齢化が進む超高齢化の国として知られていて、膝の変形でお困りの患者様がどんどん増えています。当センターはこのような膝の変形による疼痛・歩行障害などに対して人工膝関節による手術治療を専門に行っています。人工膝関節置換術は変形して曲がってしまった膝をまっすぐに伸ばし、変形による膝関節面からの痛みを取り除くうえで大変優れた手術です。これまで私が勤務してきた千葉大学、君津中央病院、船橋整形外科病院、北千葉整形外科などで研究を重ねてきた人工膝関節置換術の手術手技、手術後リハビリの工夫を今後はこの湘南鎌倉総合病院、人工膝関節センターで広めていくつもりです。

人工膝関節置換術は膝の変形・痛みで悩んでいる患者様にとって最後の手段ですが、最近では20年、30年以上の良好な臨床成績も報告されています。一方で、多くはありませんが合併症のリスクもあります。加齢により衰えた下肢の筋肉から生じる問題もあります。膝の変形による痛みでお悩みの方はぜひ外来を受診して相談してみてください。
(人工膝関節センター センター長 金山 竜沢)

  • 外来は完全予約制。
    お問合わせは、0467-46-7172(直通)月から金曜 10:00から16:00

人工膝関節置換術とは?

人工膝関節置換術とは変形した膝の関節面を切除して、人工的に作った膝関節で置き換える手術です。人工膝関節は金属(一部セラミック製のものもあります)でできた大腿骨側の部品(大腿骨コンポーネント)と脛骨側の部品(脛骨コンポーネント)および大腿骨・脛骨コンポーネントの間にはさむポリエチレン製の部品から構成されています。膝の関節の表面をすべて人工の関節で置き換える人工膝関節全置換術(Total Knee Arthroplasty: TKA)と膝関節内側の一部のみが変形している場合の人工膝関節部分置換術(または単顆置換術)(Unicompartmental Knee Arthroplasty: UKA)があります。どちらの手術も痛みの元である変形している関節面を削り取って人工の関節にしてしまうので、変形の関節面から感じていた痛みをとるのに大変優れた手術です。どちらを行うかは変形の程度や膝の曲げ伸ばしの制限の程度などによって使い分けています。

膝の模型と実際の変形。軟骨と半月板がすり減って傷んでくると変形が進行します。

人工膝関節全置換術の写真

人工膝関節部分置換術の写真

治療内容  変形した膝の関節面を切除して、人工的に作った膝関節で置き換える手術をした結果、変形の程度による個人差もありますがO脚もかなりまっすぐにすることができました。(※写真は術後1週間のものです)
治療期間と回数  手術後、1週間に1、2回~2週間に1回程度リハビリ通院を3ヶ月間続けていただきます。
費用  保険適用になります。高額療養費制度を使用することができるので、患者さんの所得によって費用は異なります。
主なリスクや副作用等  ・どのような手術であっても合併症のリスクが全くないという手術はありません。
 ・麻酔・痛み止め、抗生剤そのほか使用する薬が体に合わないことがあります。
 ・術後、創部に菌が入り膿んでしまう可能性があります。
 ・術後、早期のリハビリが必要です。


手術を手伝ってくれる愉快な手術室ナースのみなさんです。

人工膝関節に求められる機能

人工膝関節に求められる重要な機能が3つあります。変形した関節面からの痛みが出ないこと、膝がぐらつかないで立つ・歩くことができること、十分に曲げ伸ばしができることです。

・変形した関節面からの痛みは人工膝関節の手術を受けることで達成されます。もちろん加齢による膝周囲筋肉の衰えなどによる筋肉や筋の痛みは残ることがありますが、変形した関節面は手術で取り除いてしまうので理論上同じ痛みが出ることはありません。

・もともとの変形が強すぎると人工膝関節の手術をしても膝のぐらつきが残ってしまう人がいます。もともとの変形が強すぎる場合はそれに応じた手術の工夫が必要です。それでも不十分な場合には装具の使用によりできるだけ膝がぐらつかないような工夫を考える必要があります。

・人工関節の手術をしただけで十分な膝の曲げ伸ばしができるわけではありません。手術後のリハビリが重要です。手術後早期から膝を動かすリハビリをしないと固まって動かなくなってしまうのです。医師や理学療法士の説明をよく聞いて膝の曲げ伸ばしの練習をしっかりしましょう。

当センターの手術の特徴

手術は全身麻酔で眠っている間に行います。人工膝関節全置換術(TKA)は変形してしまった膝関節表面の骨を切り取って、大腿骨・脛骨コンポーネントとポリエチレンを設置するためのすきま(ギャップと言います)を作る手術です。ぐらつくことなくスムーズに膝が動くためには、膝を伸ばした時にも曲げたときにもきつすぎず、緩すぎないようにちょうどよいすきま(ギャップ)を作ることが重要です。このための手術方法がいろいろあり学会や論文などで発表されてきましたが、それぞれに長所・短所があり議論が繰り返されてきました。当センターの人工膝関節全置換術(TKA)の特徴は、今まで議論されてきた代表的な手術方法の長所を組み合わせ短所を補うように融合させた手術方法(大腿骨後顆プレカット法と言います)を用いていることです。手術の途中の段階でプレカットトライアルという仮の小さな大腿骨コンポーネントを設置することにより、実際の大腿骨コンポーネントを設置した場合と同じような状態にして関節のすきま(ギャップ)を確認して、その後に1mm単位の正確な調整を行うことが可能な方法です。

2020年度手術実績

2020年4月から20213月まで1年間の手術実績は人工膝関節全置換術96件、人工膝関節単顆置換術5件、人工膝関節再置換術3件、その他5件、合計109件の手術を行いました。高度変形膝や、過去に行われた人工関節の破損や感染に対する再置換術などもありましたが、いずれも術後経過は良好で順調に回復しています。

術後リハビリの特徴

当センターの術後リハビリの特徴は早期からの徹底指導です。手術当日から膝だけでなく寝返りなど体全体を動かし、翌日から膝の曲げ伸ばしや歩行訓練を開始しています。手術後は出血により膝が腫れています。出血した血液は時間とともに周囲の組織にくっついてしまいます(癒着と言います)。手術後に膝を動かさないでじっとしていると癒着によって伸ばすことにも曲げることにも制限が出て固まってしまいます(拘縮と言います)。癒着は手術後およそ24週間ほどで完成してしまい、癒着により一度拘縮してしまった膝はその後のリハビリの努力で曲げ伸ばしを改善させることは困難です。したがって手術後の早期のリハビリの中で最も重要なのは、膝が癒着しないように曲げ伸ばしの練習をすることです。

手術後は何も指示をされないと、絶対安静だと思い込んで体を全く動かそうとしない人がほとんどです。当センターの人工膝関節置換術の手術ではこのような必要はありません。手術当日も膝を曲げておしりを上げたり下げたりの運動や寝返りなど下肢だけでなく体全体の運動を指導しています。1日中体を動かさないで寝ていると手術とは関係のない腰まで痛くなってしまいます。手術直後から下肢の運動を行うことは重大な合併症の一つである下肢深部静脈血栓症(エコノミークラス症候群の元)の予防にも有効です。しかし手術後すぐに下肢を動かすことは強い痛みがあってはできません。手術後の痛みを和らげるために手術中に神経ブロック注射を麻酔科の専門の先生にしていただき、手術の最後に関節内にも麻酔の注射をしています。更に手術後に点滴による痛み止めを24時間投与して、できるだけ強い痛みを感じることなく下肢の運動や寝返りなどの運動ができるように工夫しています。

手術の次の日からは膝の曲げ伸ばしと立つ・歩くなどの練習を始めます。膝を曲げる練習は専門のリハビリスタッフが指導します。膝の下にクッション(膝リハビリクッションと言います)を挟み、タオルを使って自分で足首を引っ張る方法を覚えてもらい、リハビリの時間以外にも自分で練習をしてもらいます。自分で引っ張るので曲げる強さを自分で調節できる方法です。1日に何回も自分で練習することにより膝の癒着と拘縮を防ぎます。この方法で以前に比べて膝の曲がる角度がどんどん良くなっています。手術前の変形の程度や曲げ伸ばし角度の制限にもよりますが、手術翌日に平均100度以上、退院時にはほとんどの人が120度を超える屈曲角度を獲得できていて、140度以上の屈曲ができる人も珍しくない良好な結果が得られています(写真)。

しっかり歩く練習も重要です。手術の次の日から歩く練習を始めます。この時点で傷の痛みはありますが手術前の変形した関節面からの痛みはすでに無くなっています。人工膝関節全置換術は初めから完全に体重をかけて歩きます。部分置換術ではごくまれに骨折の合併症が発生するリスクがあるため少しかばい気味に歩く練習を始めます。どちらの手術でも初めは転ばないように気を付けて歩行器でゆっくり歩きます。歩く能力はそれぞれの体力や筋力にもよりますが、ほとんどの人が23日のうちに歩行器や杖を使って自分でトイレに行くことができるようになります。

手術後早期から長く歩く練習をしたり長時間足を垂らして椅子に座っていると膝の腫れが強くなってしまいます。先ほども述べたように手術後早期のリハビリで一番重要なのは曲げ伸ばしの練習です。腫れが強くなると曲げ伸ばしが悪くなってしまうので、長く歩く・長時間椅子に座ることはしない方が良いでしょう。腫れを早く改善させるために、術後3か月までは毛布を3枚ほどシーツでくるんだクッションに足を乗せる時間を長くとるように入院中に指導します。手術後3か月までは家の中での生活が無理なくできる程度の活動性でよいものと考えています。また、手術前にはしていなかった筋力トレーニングを手術後すぐにする必要もないものと考えています。まずは腫れがひどくならないように気を付けながら曲げ伸ばしの練習を優先するようにしましょう。手術前のかばっている歩行よりも屋内の短距離歩行でもしっかり体重をかける歩行の方が下肢の筋力を鍛えることになるでしょう。長く歩く・筋力訓練などの練習は、曲げ伸ばしの練習をしっかり3か月行ってから時間をかけてゆっくりやっていけば良いでしょう。
膝関節担当の理学療法士です。

入院期間

入院期間は人工膝関節全置換術で12日間、部分置換術で7日間ほどです。あまり強く勧めてはいませんが、早期退院希望の方はトイレ歩行が可能になっていればより早期に退院することも可能です。ただ、この時点では腫れも強く残っていて曲げ伸ばしの練習も十分ではありません。それでも早期退院が希望の方はご相談ください。その際は早期退院する上での注意点を説明します。退院の時点では手術による出血で膝の周りが腫れています。これがある程度落ち着くまでのおよそ3か月までは無理に歩き回らないで、腫れを早く引かせるために寝て下肢を高く上げる時間を長くとるという自宅療養をしながら膝の曲げ伸ばしのリハビリに専念することが大事です。

両膝同時手術について

膝の変形は両膝同時に進行することも珍しくありません。両膝の変形・痛みでお困りの場合、片膝ずつ手術をすると2回の入院・手術・リハビリを行うことになり全体の治療期間が大変長いものとなります。強い貧血などの全身状態の問題がなければ、ご希望であれば同時に両膝の人工関節置換術を行うことも可能です。最近では両膝同時の手術を希望する患者様も増えています。この場合でも手術当日・翌日の運動やリハビリは片膝の手術と同じように行うことができます。ご希望の方は受診時に相談してください。

輸血について

もともと強い貧血がある場合を除いて、通常は両膝同時手術の場合でも輸血を使うことはほとんどありません。自分の血液を手術前にためておく自己血輸血を準備することもなく手術をすることが可能です。

合併症のリスク

・どのような手術であっても合併症のリスクが全くないという手術はありません。

・麻酔、痛み止め、抗生剤そのほか使用する薬に体が合わないことがあります。

・エコノミークラス症候群。手術だけでなく、震災後の不自由な避難生活や長時間の飛行機での移動などで体を動かせない時間が長くなると下肢の静脈の中で血が固まってしまう深部静脈血栓症が起きてしまうことがあります。血栓が静脈の血の流れに乗って移動してしまうと肺に詰まってしまいます。大きな血栓が詰まると呼吸に障害が出てしまい、大変稀ではありますが命の問題になってしまうことがあります。

・術後創部感染。どのような手術であっても傷に細菌が入り膿んでしまう感染が起きることがあります。腫れて熱が出て強い痛みを伴うので放っておくことはできません。再手術により膝の中をきれいに洗浄する必要があります。洗浄と抗生剤投与で落ち着くことが多いのですが、一部の方で感染がぶり返してしまうことがあります。長引くと人工関節が感染の巣になってしまうことがあるため、いったん人工関節を抜去して治療で感染が落ち着いてから再度人工関節を入れなおすという手術が必要になりますことがあります。この場合の治療は長期間に及び抗生剤も長期に使用する必要があります。

遠方から来院される患者様へ

遠方にお住まいで当センターでの手術を希望する方もご相談を受け付けています。ただし遠方にお住まいの方は通常通りの受診やリハビリ通院が困難になるものと思われますので以下の点にご注意ください。まずお近くの通いやすい整形外科を受診して術後のリハビリをしてもらえるか相談してください。その上で当センターあての紹介状を書いてもらってください。こうしておけば術後のリハビリだけでなく、万が一の合併症発生時などに迅速に診ていただきこちらに連絡いただける体制が作れます。遠方であっても退院後の定期診察にはある程度は来ていただきます。退院後に全く診察にも来られないという場合は、当センターでの手術は難しいものと考えます。この場合は地元の通える病院での手術をご検討いただくことをお勧めさせていただきます。

スタッフ

奥山 裕之/ 弘前大学医学部卒
人工膝関節センター 医長
略歴
2012年3月 弘前大学医学部卒業
2012年4月 大船中央病院初期研修医
2014年4月 藤沢市民病院 整形外科
2015年4月 横浜市立大学附属病院 整形外科
2016年4月 横須賀共済病院 整形外科
2017年4月 平塚共済病院 整形外科
2019年4月 寒川病院 整形外科
2021年4月 湘南鎌倉総合病院 人工膝関節センター
認定等 日本整形外科学会専門医
所属学会 日本整形外科学会、日本人工関節学会、日本骨折治療学会
詳細

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