膿胸とは?
膿胸とは?
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- 肺の周囲に水が貯まり、肺が十分広がらなくなる病態を胸水貯留と言いますが、感染性の胸水が貯留した状態が膿胸です。
- “感染性胸水”と“膿胸”という言葉の使い分けは医師、施設によっても変わりますが、いずれも感染した胸水を排出する胸腔ドレナージと、抗生物質投与を行って治療します。
- 肺炎に続発して起こることが多く、近年は特に高齢者の誤嚥性肺炎が原因となることが多いです。
治療の基本
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- 肺炎に準じて抗生物質の投薬を行います。
- 気胸と同様に胸腔ドレナージを行いますが、胸水がいびつな形態で貯まっていることも多く、気胸よりもドレーン挿入の難易度が高いことも多いです。
- 胸水の貯まる場所によってはベッドサイドでの胸腔ドレナージが難しいこともあり、その場合はIVRセンターに依頼してCTガイド下ドレナージ(CT室でピンポイントに細いカテーテルを挿入する)を施行しています。
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CTガイド下ドレナージの特色
通常のドレナージが困難な場所でも比較的安全に施行可能であり、過去に当院で合併症はありません。
膿胸のステージ
【滲出期】
初期段階で、さらさらした胸水が貯まる状態です。
【繊維素膿性期】
胸水が固まり始めてゼリー状になり、ドレナージだけでは十分な排出が期待できない状態です。
【器質化期】
さらに胸腔内の貯留物が固くなって、ドレナージだけで治癒困難な状態です。
繊維素溶解療法について
一般的に血栓溶解療法に使用されるウロキナーゼという薬剤を胸腔内に使用します(保険外診療)。
多くの施設で使用されている治療方法で、ゼリー状になった胸水を溶かして排出させる方法です。主に繊維素膿性期に使用します。
文献的な根拠は乏しいとされていますが、経験上は明らかに有効な治療であり、積極的にウロキナーゼを注入して治療することで、多くの場合は手術を回避できます。
胸腔鏡手術
ドレナージ、薬物治療で治癒困難な場合は、全身麻酔で胸腔鏡手術を行います。
タイミングが遅れると癒着が高度になり出血なども伴う手術になりますが、早い時期に行えば短時間で難易度も低い手術です。
全身麻酔に耐えられる患者様には有効な治療方法で、早期退院が可能になります。
非手術治療について
誤嚥性肺炎から発症した高齢者などの場合は全身麻酔に耐えられない方も多いのが現状です。
当院では繰り返しCTガイド下ドレナージを行うことで、良好な治療成績をあげています。ただし手術よりは入院期間が長くなり、再発することもあります。
また、膿胸になる高齢者はもともと状態が悪い方も多く、膿胸が治癒しても入院中に老衰や他疾患で亡くなられる方も一定数おられます。
参考文献
我々が行っている膿胸治療について、論文で報告しています。
Nishida T et al. Muitimodal treatment for acute empyema based on the patient’s condition, including patients who are bedridden: A single center retrospective study.
Can J Respir Ther 2021; 57: 143-146.